
愛するペットを亡くしてしまったとき、「最後まで一緒にいたい」「そばで見守っていてほしい」という気持ちは多くの飼い主が抱く自然な想いです。そんな方々に選ばれているのが、ペットの「手元供養」という方法です。
手元供養とは、火葬後のペットの遺骨を自宅や身近な場所に安置し、日々の生活の中で供養をおこなう方法をいいます。現代の住環境やペット火葬の普及により、手元供養を選択する飼い主が増加しています。
本記事では、ペットの手元供養について基本的な知識から具体的な方法、費用相場まで詳しく解説します。ペットとの最後の時間をどう過ごすか迷われている方、手元供養に興味をお持ちの方の参考になれば幸いです。
ペットの手元供養とは?

ペットの手元供養とは、火葬後のペットの遺骨を、飼い主の手の届く場所に安置して供養することです。具体的には、自宅に小さな祭壇を設けて骨壺を祀る方法や、遺骨を加工してアクセサリーとして身に着ける方法などがあります。
ペットの手元供養の最大の特徴は、ペットをいつでも身近に感じられることです。お墓や納骨堂に安置する場合と異なり、日常生活の中でペットに語りかけたり、毎日の供養をおこなったりすることが可能です。
人間の供養とは異なり、ペットの手元供養には法的な制約がほとんどありません。そのため、飼い主の想いや生活スタイルに合わせて、自由度の高い供養が可能です。期間の制限もなく、飼い主が望む限り手元で供養を続けることができます。
手元供養を選択する際に重要なのは、ペット火葬の方法です。他のペットと一緒におこなう合同火葬では遺骨の返却がないため、必ず個別火葬を選択し、遺骨が返却されることを確認する必要があります。
ペットの手元供養のメリット

ペットの手元供養について、最も大きなメリットは、日常生活の中でペットとの絆を継続できることです。生前と同じようにペットに声をかけることができ、喪失感を和らげる効果があります。これは、ペットロスに悩む飼い主にとって大きな心の支えとなるでしょう。
経済面でのメリットも存在します。お墓の建立や納骨堂の利用には初期費用に加えて年間管理費が必要ですが、手元供養では初期費用のみで済みます。予算に応じて供養グッズを選択できるため、数千円から始めることも可能です。
また、引っ越しなどの環境の変化にも柔軟に対応できます。お墓の場合は移転が困難ですが、手元供養なら祭壇やアクセサリーと一緒に移動できるため、生活の変化に左右されることがありません。
ペットの手元供養のデメリットと対策

一方で、ペットの手元供養にはいくつかの注意点もあります。
最も注意すべき点は、遺骨を自宅に置くことに対する抵抗感です。家族の中には、ペットであっても遺骨を居住空間に安置することに、心理的な抵抗感を覚える方もいます。この場合は、事前に家族で供養方法について十分に話し合い、理解を得ることが重要です。対策として、扉付きの仏壇を選んでお参り時以外は見えないようにする、ベッドサイドなど個人的な空間に安置するなどの配慮が挙げられます。
また、自分がいなくなった後の管理の問題も考慮すべき点です。ペットの手元供養をおこなう飼い主が高齢になったり亡くなったりした場合、遺骨の処遇をどうするかという課題が生まれます。元気なうちに、散骨や納骨堂への移管、ペット霊園への納骨など、意思を明確にしておきましょう。
さらに、管理スペースの問題についても考えておくべきです。住環境によっては祭壇を設置する場所の確保が困難な場合があります。特に賃貸住宅や狭い住空間では、仏壇や祭壇の設置が現実的でないケースもあります。この場合は、コンパクトな供養グッズを検討したり、アクセサリータイプの手元供養を選んだりすることがおすすめです。
ペットの手元供養の2つの方法と費用相場

ペットの手元供養には、大きく分けて「自宅の祭壇に祀る供養」と「アクセサリーで持ち歩く供養」の2つがあります。それぞれの特徴と費用相場について詳しく見ていきましょう。
(1)自宅の祭壇に祀る供養

1つ目が、家の中に専用の祭壇やステージを設けて、骨壺を安置する方法です。人間の仏壇と同様の形式で、毎日のお世話をおこないます。
この方法のメリットは、家族全員がペットとの時間を共有できることです。朝のお参りや夕方のお線香など、日常的な供養の習慣を作ることで、ペットとの絆を感じ続けることができます。また、四十九日法要や一周忌など、節目の法要を自宅でおこなうことも可能です。
必要なアイテムとしては、仏壇または祭壇、骨壺、写真立て、お線香立て、ろうそく立て、お水やお食事を供える器などがあります。これらは人間用の仏具を使用することもできますし、ペット専用のかわいらしいデザインのものも多数販売されています。
費用相場は、シンプルなものであれば1万円程度から始められます。コンパクトな祭壇と基本的な仏具セットで3万円程度、本格的なペット仏壇セットでは10万円程度が目安となります。骨壺も材質やデザインによって数千円から数万円まで幅広い選択肢があります。
設置場所としては、リビング、キッチン、ベッドサイドなどが挙げられます。リビングに設置する場合は来客時のことを考慮し、扉付きの仏壇を選ぶ方もいらっしゃいます。
(2)アクセサリーで持ち歩く供養

次に、粉骨加工したペットの遺骨をペンダント、ブレスレット、キーホルダーなどに納めて身に着ける方法です。
この方法の最大のメリットは、いつでもどこでもペットと一緒にいられることです。外出先でもペットの存在を感じることができ、精神的な支えとなります。また、見た目は通常のアクセサリーと変わらないため、周囲に気づかれることなく供養を続けられます。
アクセサリーの種類は実にさまざまです。ネックレスタイプのペンダントが最も一般的で、リング、ブレスレット、ピアス、キーホルダーなども選択できます。素材も合金製の手頃なものから、シルバー、ゴールド、プラチナまで幅広く用意されています。
費用相場は素材とデザインによって大きく異なりますが、合金製のシンプルなペンダントなら3,000円程度から購入できます。シルバーアクセサリーでは1万円から5万円程度、ゴールドやプラチナになると10万円を超えることも珍しくありません。
特殊な加工として、遺骨からダイヤモンドを作る「遺骨ダイヤモンド」というサービスもあります。この場合の費用は50万円から300万円程度と高額になりますが、半永久的にペットとの絆を形として残すことができます。
アクセサリータイプを選択する場合の注意点として、すべての遺骨を納めることは困難なため、残りの遺骨の処遇も併せて検討する必要があります。
5つのステップでわかる|ペットの手元供養の進め方

ペットの手元供養を実際におこなうための具体的な手順を、5つのステップに分けて解説します。
(1)ペットの個別火葬

手元供養を選択する場合、ペット火葬の方法を正しく選ぶことが重要です。
まず、ペット火葬には以下の3つの方法があります。
| 火葬方法 | 遺骨返却 | 特徴 |
|---|---|---|
| 合同火葬 | なし | ・複数のペットを一緒に火葬 ・主に行政(市役所など)がおこなっている火葬方法 |
| 個別一任火葬 | あり | ・火葬から収骨まで業者に一任 |
| 個別立会火葬 | あり | ・お別れの儀式やセレモニーも可能 |
合同火葬は他のペットと一緒に火葬するため遺骨の返却がなく、手元供養には適しません。次に、個別一任火葬は業者にすべてを任せる方法です。火葬から収骨までをペット火葬業者がおこないます。
最も確実なのは個別立会い火葬です。この方法では、飼い主が火葬に立ち会い、骨上げも自身でおこなうため、確実に遺骨を受け取ることができます。人間の葬儀に最も近い形式で、ペットとの最後の時間を大切に過ごすことが可能です。
火葬を依頼する際は、手元供養を希望することを明確に伝え、返骨の確認を必ずおこないましょう。また、後の粉骨処理を見据えて、火葬業者が粉骨サービスを提供しているかも確認しておくと便利です。
(2)ペットの遺骨を粉骨

粉骨とは、火葬後の遺骨をパウダー状に加工することです。手元供養では多くの場合、この粉骨処理をおこないます。
粉骨をおこなう理由はいくつかあります。まず、遺骨をコンパクトにできるため、小さな骨壺やアクセサリーに納めやすくなります。また、粉骨処理により遺骨が乾燥し、カビの発生を抑制する効果もあります。さらに、一部を手元供養用に、残りを散骨用になど、用途に応じて分けやすくなります。
粉骨は火葬をおこなったペット火葬場で依頼するのが最も便利です。自社で火葬した場合は3,000円程度、他社で火葬した遺骨の場合は5,000円程度が相場となっています。専門の粉骨業者に依頼する場合は、ペットの大きさによって5,000円から1万円程度の費用がかかります。
粉骨処理には「全粉骨」と「部分粉骨」があります。全粉骨はすべての遺骨を粉状にする方法で、部分粉骨は喉仏など一部を原形のまま残し、他を粉骨する方法です。希望する手元供養の内容に応じて選択しましょう。
(3)ペットの手元供養グッズを購入

粉骨処理が完了したら、供養に必要なグッズを準備します。
自宅供養を選択する場合は、まず設置場所を決めてからグッズを選びましょう。リビングに設置する場合は扉付きの仏壇、ベッドサイドなら小さな祭壇が適しています。基本的なセットには、仏壇または祭壇、骨壺、写真立て、お線香立て、ろうそく立て、お水やお供え物を置く器が含まれます。
ペット専用の仏具は、従来の仏壇仏具店だけでなく、インターネット通販でも幅広く販売されています。デザインも多彩で、木製の落ち着いたものから、カラフルでかわいらしいものまであります。
アクセサリータイプを選ぶ場合は、素材、デザイン、サイズを慎重に検討しましょう。毎日身に着けるものなので、金属アレルギーの有無も確認が必要です。チタン製のアクセサリーは金属アレルギーの方でも安心して使用できます。
購入場所としては、ペット用品店、仏壇仏具店、インターネット通販などがあります。実際に手に取って確認したい場合は実店舗、豊富な選択肢から選びたい場合はインターネット通販がおすすめです。
(4)ペットの遺骨を祀る

必要なグッズが揃ったら、いよいよペットの遺骨を祀ります。
自宅の祭壇に祀る供養の場合は、まず祭壇の設置場所を清潔にし、仏壇や祭壇を配置します。骨壺を中央に置き、その周りに写真立て、お線香立て、お供え物を配置します。初回のお参りでは、ペットの好物をお供えし、感謝の気持ちを込めてお線香を上げるとよいでしょう。
アクセサリーの場合は、専用の小さなスプーンなどを使って、粉骨した遺骨を丁寧にアクセサリーに納めます。
遺骨を祀る際は、ペットの性格や好みを思い出しながら、生前と同じように接することが大切です。「お疲れさま」「ありがとう」といった言葉をかけることで、飼い主自身の心の整理にもつながります。
残った遺骨がある場合には、散骨や納骨堂への納骨といった選択肢もあります。
(5)日々の供養

手元供養の準備が整ったら、日々の供養をおこないます。
自宅の祭壇に祀る供養の場合は、人間の仏壇と同様に、毎日のお世話をおこないます。朝の挨拶から始まり、お水やお食事の交換、お線香を上げることが基本となります。ただし、ペットの供養に厳格な決まりはないため、飼い主のライフスタイルに合わせて負担にならない範囲でおこないましょう。
お供え物は、ペットが生前好んだ食べ物を中心に選びます。ドッグフードやキャットフード、好物のおやつなどを小皿に盛ってお供えします。お水は毎日新鮮なものに交換し、お線香は朝夕の2回上げるのが一般的です。
アクセサリータイプの場合は、身に着けることそのものが供養となります。朝の身支度の際にペットに挨拶し、外した際も丁寧に扱うことで、日々の供養を実践できます。
月命日や誕生日など、特別な日にはいつもより丁寧な供養をおこなうのもよいでしょう。ペットの写真を新しいものに変えたり、特別なお供え物を用意したりすることで、メリハリのある供養ができます。
まとめ
ペットの手元供養は、愛するペットとの絆を日常生活の中で継続できる、心温まる供養方法です。自宅に祭壇を設ける方法から、アクセサリーとして身に着ける方法まで、飼い主のライフスタイルや想いに合わせて選択できます。
手元供養をおこなう際の重要なポイントは、必ず個別火葬を選択することです。行政(市役所など)が実施している合同火葬では遺骨を受け取ることができないため、注意してください。
ペットの手元供養は、悲しみを癒し、感謝の気持ちを表現する素晴らしい方法です。愛するペットとの思い出を大切にしながら、新しい形での絆を築いていく第一歩として、ぜひ検討してみてください。
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